2009年10月17日土曜日

Classic Films of Bali

プログラム

1930年代のバリと言えば、ヴァルター・シュピースを始め数々の西洋人芸術家や人類学者などがこの島に魅せられてやって来た時代であり、そういった人々の手による調査記録や論文、著作も数多い。そういった著作や写真を通じて、少し昔のバリの様子を興味深く知ったり、この島の音楽や舞踊に魅せられる著者たちの(特にヴァルター・シュピースとコリン・マックフィーの)「気持ち」に深く共感したりしている私にとって、1930年代のバリというのは(ちょうど1950年代のリオ・デ・ジャネイロのように)一種の憧憬をかきたてるテーマなのだが、その時代の貴重な映像記録を集めた映写会が4夜連続であった。フランスのLa Cinémathèque de la Danse, Paris(パリ舞踏映像図書館といったところだろうか)という機関の好企画で、在インドネシアフランス大使館が後援し、アマンダリホテルが20周年記念行事の一環として協賛したようだ。ウブド郊外クデワタンの美しい渓谷を見下ろす神社のホールで、地元のバリ人の人たちを招いて無料で行われた。さすがはアマンダリ、太っ腹である。

上映された作品を一覧すると、
第1夜:
- 「ヴァルター・シュピースの生涯」(1986) H. Hulscher
- 「バリ」(1933) Rolf de Maré
第2夜:
- 「悪霊の島」(1933) ヴィクトル・ヴォン・プレッセン&ヴァルター・シュピース
第3夜:
- 「バリのトランスと舞踊」(1938) マーガレット・ミード&グレゴリー・ベイトソン
- 「レゴン—処女たちの島」(1935) Henry de la Falaise
第4夜:
- 「楽園の異邦人」(2007) Agnès Montenay
- 「コリン・マックフィー アジア音楽の魅惑」(1985) Michael Blackwood
(注:邦題は便宜上筆者がつけたもの)

もちろん私は全夜通い詰めたが、非常に充実した楽しい4夜であった。

特に、Rolf de Maréという人が撮った「バリ」(1933)という30分ほどの無声記録映像は、様々な様式の舞踊を記録したものだが、その中に有名な天才舞踏家マリオが子どもに稽古をつけている場面が収められていて、これは本当に鳥肌ものだった。この有名な舞踏家については、写真や文章で目にする機会はあったものの(それだけでも息を呑むほど美しかったが)、実際に動いている映像を見るのは初めてだったのだ。その体の線や動きの美しさ、子どもに稽古を付けていくときの、操り人形師と操り人形のような独特な空気感、すべてがただただ美しくて、見入った。会場もこの場面は喝采であった。

また「コリン・マックフィー アジア音楽の魅惑」(1985)では、当時このカナダ人音楽家の運転手を務め、バリの音楽調査の水先案内人となったクンダン(太鼓)の名手で、実は私のガムランの先生の師匠でもあった故マデ・ルバ師のインタビュー映像などもあり、個人的には大感激だった。

ちょっとおもしろかったのは地元バリの人たちのノリのいい反応で、恋物語で若い二人が思いを寄せる場面なんかはやんややんやと冷やかしが飛ぶし、1930年代の胸を露わにした女性たちとか当時の習俗などは、外国人の私たちの目から見るとそれほど現代と違っていると思わないのだが、今のバリの子どもたちから見るとおかしいらしく、ゲラゲラ笑っていた。

余談だが、このイベントはまったく街中で宣伝を見かけなかった。私がなぜ知ったかというと、たまたまいつも行くヨガスタジオの受付に、たまたま無造作に置かれていた新聞の切れ端のようなものを目にして、メモを取らせてもらい、アマンダリまで問い合わせに行ったのだ。これを運命でなくして何と呼ぶ?

会場からの眺め