2011年7月31日日曜日

チャロナラン

プリアタン村でチャロナランが行われた。

チャロナランというのは悪魔祓いの劇だが、プリアタン村ではその昔これを行わなかったところ、疫病が流行したくさんの人が亡くなったので、必ずやるようになったのだと、以前プリアタン村の人に聞いた。

夜が更けてから行われ、終わるのは真夜中。空が白むまで続くこともある。

いつもは途中で眠くなって帰ってしまう私なのだが、せっかくSさんも来ていることだし、今回はがんばってフル鑑賞することにした。

夕方6時くらいにAさんのお宅からお祈りに行き、そのあといったんAさんの家に戻ってご飯をいただいて、夜9時くらいから会場へ。


チャロナラン劇の基本ラインは、バロン(獅子舞の獅子のようなルックスの聖なる存在)とランダ(魔女)との闘いだが、ストーリーや構成、娯楽性や宗教性の度合いは村によって全く異なり、非常に多くのバリエーションがあるようだ。


手元の資料に載っていたチャロナランの物語をご紹介すると—


舞台は11世紀、ジャワのエルランガ王の治世。

エルランガ王の母はジャワの王女マヘンドラダッタ、父はバリの統治者ダルモダヤナであった。

マヘンドラダッタが魔術を使ったため、ダルモダヤナはマヘンドラダッタを森に追放し、別の女性と再婚した。

ダルモダヤナが亡くなったとき、マヘンドラダッタは未亡人=ランダとなった。

マヘンドラダッタは父の再婚を止めなかった息子のエルランガを恨んでいたため、弟子を集めて、エルランガが治めていた東ジャワ王国を破壊して回った。

マヘンドラダッタにはラトナ・ムンガリという美しい娘がいたが、魔女の娘であるが故に結婚相手が見つからなかった。

ラトナはカーストが高いため、カーストの高い男性と結婚しなければならない。

娘の結婚相手が見つからないこともマヘンドラダッタを苛立たせ、ランダとなったマヘンドラダッタは、弟子とともに東ジャワ王国を暴れ回り、疫病を流行らせ、王国に破壊と死をもたらした。

ランダは魔力を維持するために、赤ん坊の死体を必要としたため、娘のラトナや弟子たちを墓地に遣わし、赤ん坊の死体を漁って来させた。

エルランガはランダを破滅させようとしたが、ランダの魔力が強すぎてかなわなかったため、司祭のエンプ・プラダに助けを求めた。

エンプ・プラダはその息子または助手(どちらかは不明)のバフラを送り、ラトナと結婚させた。

二人は幸せに暮らした。

しかしバフラの本当の使命は、義理の母ランダの秘密を探り出すことだった。

バフラはついにランダの魔術書を盗みだし、それをエンプ・プラダに届けた。

エンプ・プラダはランダの魔術を使って犠牲者たちを生き返らせ、自らランダと対決した。

エンプ・プラダはまず黒魔術返しによってランダを殺し、一度生き返らせて、ランダが人間の姿をしているときに再び殺した。


以上がフルストーリーだが、よくチャロナラン劇で行われるバリエーションは—


ランダは娘のラルンに、墓地で赤ん坊の死体を漁って来るよう命令する。

ランダは祈祷のための供物が必要で、供物には赤ん坊の死体が必要だった。

ラルンは墓地に行って赤ん坊の死体(赤い布でくるまれている)を見つけ、それを生きた赤ん坊のようにあやしている。

木の陰からこれを見ていたバロンが進み出て、赤ん坊を渡すように言う。

もみあった末、バロンが赤ん坊を奪う。

ラルンは泣きながら母親ランダの元に帰るが、ランダは「赤ん坊を取ってこいと言ったのに、敵を連れてきた」と激怒する。

ランダはラルンに、バロンとの闘いに勝つことができるよう、家に帰って全ての社で祈るよう命令する。

ランダは大声を上げ、持てる魔力を結集する。

その声を聞きつけたバロンは、子分たちにランダを殺すよう命令する。

しかしランダは魔法の布によって、バロンの子分たちを打ち負かす。


ランダはバロンの子分たちを打ち負かすが、バロンそのものに勝利したわけではない。

バロン(善を象徴する)とランダ(悪を象徴する)の闘いに勝敗はない。

詰まるところチャロナラン劇の真髄は、ヒンドゥーバリ的な善と悪のバランスにあるのである。


(Bali: Sekala & Niskala Volume I: Essays on Religions, Ritual, and Art
by Fred B. Eiseman, JR.
より抜粋・翻訳)


さて、プリアタン村のチャロナランは、以上のようなチャロナランの物語の間に、喜劇がサンドイッチになっている。バロンの手下の男たちがランダをクリス(剣)で刺し殺そうとする場面では、ランダの魔力によって自らにクリスを突き立てる男たちが次々にトランス状態に入ってしまい、司祭が聖水を振りかけて正気に戻す。そうかと思えば、吉本新喜劇ばりのドタバタコメディが繰り広げられ、観客はドッカンドッカン受けている。一転して、ランダのもたらす厄災によって死んだ男が墓地に運ばれる(Aさんによれば、死体役をする人は強くないと本当に死んでしまうことがあるそうだ)という不気味な場面が繰り広げられ、その後にまたドタバタコメディ、とこんな具合なのである。


途中何度も雨に見舞われながら、無事にチャロナラン劇が終了すると、真夜中の2時を回っていた。

Sさんと別れて帰る頃、雨がザーッと降ってきた。


Sさんが見たこの日のウブド:

http://www.flickr.com/photos/tm1sart/sets/72157627455681074/

2011年7月30日土曜日

再会

Sさんが身を寄せているガムランの先生Aさんのお宅を訪ねた。

5年ぶりに会うSさんはちょっとふっくらしている。

ご本人曰く“震災太り”だとか。

初めてお会いするAさんはティルタ・サリのリーダーで、画家でもあり、物腰の柔らかい上品な方である。

心地よい風の吹き抜けるバレでしばらくお喋りしたあと、“震災太り”解消のため、夕方からのヨガのクラスにお誘いした。


後日談:

到着翌日だというのにSさんは早速早起きして、絵葉書か写真集にしたいような美しい写真を撮っていた。


Sさんが見たこの日のウブド:

http://www.flickr.com/photos/tm1sart/sets/72157627455679948/

2011年7月29日金曜日

Sさんがやって来た

シンガポールから帰ってきたこの日、日本からSさんがやってきた。

2006年にSさんの住む盛岡を、私が旅の途中で訪れて以来だから、5年ぶりの再会になる。


Sさんとは10年前、ここウブドで知り合った。

80年代に摩訶不思議なケチャの存在を知って以来、ずっと気になっていたここバリ島を、ようやく初めて訪れたときのことだ。

ある夜、ウブド近郊の小さな村にジョゲッ・ピンギタンという神聖な踊りを観に行くツアーに参加した。

神がかったような踊り子と、竹のガムランのやわらかな響きが素晴らしく、何か記録になるものがほしかったが、そのときカメラを持っていなかった。周りを見回してみると、大きな望遠レンズをつけた立派なカメラで写真を撮っている人がいる。公演が終わった後、おずおずと写真を売ってもらえないか聞いてみた。その人は東北のやわらかなアクセントで「売るだなんてとんでもない」と恐縮し、数日後、私の泊まっていた宿にわざわざ写真を届けてくださった。お金は受け取ってくれなかった。

それがSさんだった。


お話ししてみると、岩手県の中学校で美術を教えていて、バリの芸能に惹かれ、休みの度にバリを訪れているという。

Sさんはその後バリ好きが昂じて、教職についていた中学校でバリをテーマに特別授業を持ち、私財を投じてガムラン1セットを購入し、ウブドからガムランの先生と踊りの先生を招いて、中学生にガムランと踊りを仕込み、発表会をするという偉業まで成し遂げてしまった。

そして3年ほど前には、当時の生徒さんたちを連れてウブドを再訪されたが、当時、私はまだタイのチェンマイに住んでいたので、お会いすることができなかった。


現在は宮古市に赴任しておられる。

3月11日の震災では、Sさんご自身は無事だったものの、宮古市は津波で大きな被害を受けた。

お世話になったガムランの先生や踊りの先生に心配をかけたので、元気な顔を見せたいと、3年ぶりにやって来られたのである。


私のシンガポールからの到着が夜だったので、この日はお会いすることができなかったが、S さんはティルタ・サリ楽団の公演を観に行って、またたくさん美しい写真を撮っている。


Sさんが見たこの日のウブド:

http://www.flickr.com/photos/tm1sart/sets/72157627456126318/

2011年7月27日水曜日

児玉龍彦教授、気迫のスピーチ


シンガポールから帰ってみたら、ダーリンとカナダに移住したMhちゃんからメールが入っていて、これを見ろと言う。

7月27日、衆議院厚生労働委員会に参考人として呼ばれた、児玉龍彦・東大先端科学技術研究センター教授/東大アイソトープ総合センター長の気迫のスピーチ。

その後ネット上でもかなり話題になった。

「7万人の人が自宅を離れて彷徨っているときに、国会はいったい何をやっているのですか!」

児玉先生の具体的な提案が、その後ひとつでも採り上げられているのだろうか。

2011年7月22日金曜日

広河隆一さんのチェルノブイリレポート(1993/94年)

チェルノブイリ原発事故から7〜8年後の1993〜94年、櫻井よしこさんがキャスターを勤めていた日本テレビ「NNNきょうの出来事」で放映された「シリーズ チェルノブイリ」。

写真家の広河隆一さんによる現地レポート。


チェルノブイリ特集 第1回 潜入!最悪汚染ゾーン('93.5)


チェルノブイリ特集 第2回 子供に何が起きたか('93.5)


チェルノブイリ特集 第3回 原発汚染 死の生活('93.5)


チェルノブイリ特集 最終回 少女の体に放射能は 衝撃的レポート('94.7)


爆発的に増え始めた子どもの甲状腺ガン、小児白血病、奇形、流産・死産、亡くなっていく子どもたち…

5年後の1991年に広島の学者が率いるIAEA調査団が出した「放射線による健康被害はみとめられない」という恥知らずな安全宣言が、救援の手を遠ざけ、被害を拡大した。

山本太郎さん、福島を取材する


20110720
 山本太郎が見た“福島の現実” by PMG5


脱原発発言で事務所を辞めてフリーになり、活発に脱原発活動している俳優の山本太郎さんが、福島の現状を取材した。

高木学校の崎山比早子先生に放射線の子どもへの影響について聞いたり、

子どもの尿からセシウムが検出された親御さんたちに話を聞いたり、

福島市に設立された市民放射能測定所を取材したり、

子ども福島ネットワークの中手聖一さんにサテライト疎開構想について聞いたり、

北海道に疎開した福島県の人たちに話を聞いたり、

いい内容になっている。


福島市立の小中学校の給食は40%福島県産の食材を使用しており、放射能の測定もしていないという話には、改めて慄然とした。

福島県の農家の方々には申し訳ないが、福島県の土壌汚染レベルを見れば、そこで穫れたものが汚染されていることは残念ながらおそらく間違いない。

チェルノブイリなら移住の義務が生じるか、移住する権利が与えられるような放射線量の高いところに住み、外部から放射線を浴び続けている子どもたちに、さらに内部被曝を強要するなんて、あってはならないことだ。

地産地消は大事だが、今はそんなことを言っていられる事態ではない。

教育関係者になぜそれが分からないのか。

まず第一に子どもたちを疎開させてほしいが、いろんな事情でどうしてもそれができないのなら、せめて汚染のない食べ物を子どもたちにまわすような仕組みを早急に作らないと、ほんとうに取り返しのつかないことになる。

2011年7月21日木曜日

発送電分離と総括原価方式

最近がんばってるテレビ朝日モーニングバードのそもそも総研で、電力事業のカラクリについて学ぶ。


【発送電分離について】

経産省現役官僚の古賀茂明さんに聞く。



20110714
 発送電分離、なぜ進められないか 古賀茂明 by PMG5


【総括原価方式について】

コストがかかればかかるほど儲かるというおかしな仕組み。払うのは消費者。



20110721
 電気料金を決めている総括原価方式って何? by PMG5

2011年7月20日水曜日

人類が経験したことのない大惨事


こちらは今夜のたね蒔きジャーナル(音声のみ)。


大本営発表を聞いていたら決して分からない、事態の深刻さが分かる。

今福島で進行している事故は、人類がスリーマイルでもチェルノブイリでも経験したことのない事態になっている。

チェルノブイリの石棺は(60万人とも80万人ともいわれる事故処理作業者を動員して突貫工事で建設された。そして多くの事故処理作業者に悲惨な健康被害をもたらした)、25年経った今老朽化が進み、ひび割れから放射能が漏れ出ている。現在はそれをさらに覆う第二の石棺の建設を計画中である。工事には膨大な費用がかかる。


私たちは半永久的にこの重荷から逃れることはできない。

原子炉の安定的冷却を達成したという大本営発表


今日の文化放送「吉田照美ソコダイジナトコ」で京大原子炉実験所の小出先生が事故収束の状況、食品の汚染について解説している(音声のみ)。


【要点】


19日、政府・原子力災害対策本部は原子炉の安定的冷却は達成できたと発表したが、これはまったく根拠がない。実際には原子炉の中がどうなっているのか誰にも分からない状況である。


11万トンも溜まっている汚染水が海に漏れ出す状況が続いており、台風が来れば状況の一層の悪化が懸念される。


汚染牛の流通が問題になっているが、3月11日を境に世界は変わってしまったのであり、牛だけでなくあらゆる食品が汚染されている。大切なのは数値を明確に出し、汚染度の高いものは大人が引き受け、子どもには汚染されていないものをまわすことだ。

2011年7月19日火曜日

年7ミリシーベルトの被曝で息子を失った母


以前ご紹介した写真家・樋口健二さんのドキュメンタリー「隠された被曝労働〜日本の原発労働者〜」でも採り上げられていた嶋橋さんご夫妻は、浜岡原発で働いていた息子の伸之さんを白血病で亡くした。

伸之さんは高校卒業後、中部電力の孫請け会社に就職し、浜岡原発で働いていたが、8年後に白血病を発病。2年間の闘病の末、29歳で亡くなった。

伸之さんの被曝量は年間7ミリシーベルト程度。8年間の積算は50ミリシーベルトほどだった。

嶋橋さんご夫妻は伸之さんが亡くなってから2年後に労災を申請し、6年後に認定を勝ち取った。

福島県の学校施設の使用可否基準として文科省が通達した年間20ミリシーベルト(3.8マイクロシーベルト/時)という数字が、いかに異常か分かるだろうか。


日本の原発労働の実態については、樋口健二さんのドキュメンタリー「隠された被曝労働〜日本の原発労働者〜」を是非ご覧ください。



また2003年6月8日にスペインの新聞エル・ムンド紙に掲載されたこちらの記事も是非お読みください。

調査報告/原子力発電所における秘密 日本の原発労働

チェルノブイリ小児病棟〜5年目の報告〜

チェルノブイリ原発事故から5年後の1991年にNHK広島が放映した番組。



広島大学原爆放射能医学研究所の3人の医師が白ロシア(ベラルーシ)を訪れ、放射能の子どもたちへの健康影響を調査した。


現地では2〜3年後から甲状腺ガンと小児白血病が増え始め、4年後から急増していた。また奇形児(特に水頭症)の発生率が増えていた。


白血病の進行が非常に速いのが特徴で、11歳のヴィクトルくんは発病してからわずか20日で亡くなった。ヴィクトルくんが育ったホイニキ市はチェルノブイリから70km離れた高汚染地域(5~15Ci/km2=185~555 kBq/m2)で、ホットスポットが点在しているが、ホットスポットがどこにあるのか住民には分からない。ホイニキが放射能で汚染されていることが分かったのも、事故から3年も経ってからだった。


医師がヴィクトルくんの住んでいたアパート周辺の地表の線量を測ってみると0.33μSv/hくらいだった。同じ環境で暮らしている妹のユリアちゃん(7歳)の血液検査をしたところ、やはり染色体に異常が見つかった。


1991年5月、IAEAはチェルノブイリ原発事故による健康影響はないとする報告書を出した。その内容は事故後ベラルーシの子どもたちに起きている現実とはかけ離れたものだった。


佐藤医師のことば。「放射線はあらゆる病気を起こす。人生の流れで考えてみると、まず妊婦が被曝すると、胎児の流産・死産が起こる。その障害を乗り越えた子どもは、奇形になる。それを乗り越えた子どもがようやく正常になって生き延びると、今度は甲状腺ガン、小児白血病になる。それを過ぎると、今度は大人の白血病、ガン。被爆者は一般に寿命が短い。そして次に、次世代への遺伝的影響がある」


ヴィクトルくんとユリアちゃんの住むホイニキ市の汚染レベルは185~555 kBq/m2。これは前項に照らし合わせるならば、移住の権利が生じるゾーンであり、福島市、郡山市、二本松市あたりの汚染レベルに相当することにご注意いただきたい。二人の家の前の地表面の空間線量は0.33μSv/hくらい。福島市の中心に近い学校は大体どこでも1μSv/hを超えているそうだ。

参考:放射線数値マップ〜シンチレーション式カウンターでセシウムの数値を測定

チェルノブイリと福島の避難基準

NPOチェルノブイリへのかけはしの野呂さんも、国際環境保護NGOのベラネク氏も、異口同音に「福島の線量は高すぎる。チェルノブイリでもそんなに高いところに人は住んでいなかった。そういうところに、ふつうに人が生活し、子どもが遊んでいるなんて信じられない」と言う。


そこで改めて調べてみた。


こちらはNPO原子力資料情報室が7月10日に行った公開フォーラムの映像。

2011/7/10 公開フォーラム「福島原発の真実」セッション2 「放射線被曝の現状」

スピーカー: 阪上武さん(福島老朽原発を考える会)、崎山比早子医師(高木学校)



阪上さんの説明によると、チェルノブイリの避難基準はこのようになっている。

セシウム137による土壌汚染

185~555 kBq/m2

(5~15 Ci/km2)

555 kBq/m2以上

(15 Ci/km2)

年間被曝量

1~5mSv/年

5mSv/年以上

移住の権利

移住の義務


福島市は移住の義務と権利の間をいったりきたり。

郡山市や二本松市も移住の権利が生じる(公的支援が受けられる)ゾーンに入っている。

2011年7月18日月曜日

グリーンピースのベラネク氏「フクシマはまるで異次元」


市民団体とともに福島で独自の線量調査などを行ってきた国際環境保護団体グリーンピースのヤン・ベラネク氏が、7月3日頃、ロシア・トゥデイのインタビューに答えている。以下要約。


「福島市の中心部など、日常と何も変わらない光景が繰り広げられている一方で、線量計で測定するとそこかしこで通常の30〜50倍という高い値が出る。公園や校庭や通学路など、子どもたちが過ごす場所にホットスポットが点在し、500〜700倍というところもある。ほんとうに信じがたいことだ。これだけ放射能レベルが高ければ、明らかに人体にとって脅威だ。チェルノブイリと比較してみても、ソ連は福島市より3〜4倍低いレベルで全員避難させた。事故から3ヶ月経過しても、日本の当局は重要な情報を出さず、支援もしていない。


独自の線量調査以外に、グリーンピースは海のモニタリングを日本政府に要求している。政府が子どもを守るための施策を一部改善したのは歓迎するが、まだまだ対応が遅いし、とても十分とは言えない。


今後は収穫期を迎え、食品の汚染が心配される。健康被害という観点から言えば、外部被曝よりも内部被曝の方がずっと深刻だ。


長期的には、まず第一に、半減期の長い放射性核種が放出されており、深刻な影響は長期にわたる。日本政府は政治的なゲームに明け暮れるのでなく、国民の健康を第一に考えるべきだ。第二に、原子力は本質的に危険なものだという教訓を今回の事故から学ぶべきだ。天災、技術的欠陥、人的ミスのいずれかの組み合わせで、原子炉はたちまち制御不能に陥りうる。日本政府は脱原発へと舵を切るべきだ。日本ならば2020年までに原発を段階的に廃止することは実現可能だ。


今回の福島の教訓は日本だけでなく、他の国も学ぶべきだ。福島以降、ドイツもイタリアもスイスも脱原発へと舵を切った。原発大国のフランスでさえ、最新の世論調査によれば77%が原発の段階的廃止を望んでいる。このように、すでに世界の潮流は脱原発へと向かっている。政府は産業界の利権のワナに陥ることなく、国民と未来の世代の利益を優先すべきだ。2050年までに世界は再生可能エネルギーへとシフトできるはずだ。


福島での体験は個人的にも強烈な印象を残した。チェルノブイリに次いで、2つめの大災害の現場を目にした。ある母親は、子どもを守りたいが、どうしていいか分からない、情報がない、と泣いていた。心を打たれた。こんなことが2度と起きないようにしなければいけないという思いを新たにした」


関連記事:

原発から60km人口29万福島市内が危ない〜異常な量の放射性物質を検出 【2011年06月21日(火) 週刊現代】

ECRRクリス・バズビー博士による今後50年間のガン発生予測

ふくしま集団疎開裁判の会など市民団体の招きでECRR(欧州放射線リスク委員会)科学事務局長クリス・バズビー博士が緊急来日し、7月17日から20日まで、各地で講演を行っている。

講演日程についてはふくしま集団疎開裁判のサイトをご覧ください。


ECRR(欧州放射線リスク委員会)は日本がもっぱら依拠するICRP(国際放射線防護委員会)の非科学性を真っ向から批判してきた科学者団体である。

ICRPの非科学性については、ちょうどふくしま集団疎開裁判のサイトに分かりやすい説明があるので、転載させていただく。

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被ばくによる健康被害について、日本政府はもっぱら国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告した基準をもとに安全基準を考えてきましたが、しかし、この基準は大変問題のあるものでした。

なぜなら、それは「内部被ばくの危険性」を殆ど考慮しておらず、「核・原子力開発のためにヒバクを強制する側が、それを強制される側に、ヒバクがやむをえないもので、我慢して受忍すべきものと思わせるために、科学的装いを凝らして作った社会的基準であり、原子力開発の推進策を政治的・経済的に支える行政的手段」(中川保雄「放射線被曝の歴史」)だからです。

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(以上、ふくしま集団疎開裁判のサイトより転載)


ECRRは4月1日付けで、福島第一原発事故で放出された放射能により今後50年間、200km圏でどれだけガンを発症する人が増えるかという試算を出している。

これは当時ネット上で話題になったが、かなり暗澹とする数字だったのと、当時は私自身ECRRもクリス・バズビー博士のこともよく知らなかったので、そのテリー伊藤みたいな派手なルックスからてっきりトンデモ科学者なのかと思い、ご紹介するのをためらっていた。

が、今では私もそれなりに勉強して少しは知識もついたので、これを機にやはりご紹介しておこうと思う。


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福島ガンリスク試算

2061年までに200km圏内で417,000人がガンになるとの予測


IAEAと日本の公式発表のデータを基に、2つの方法を用いてガン発生件数を予測し、その結果をICRPモデルと比較した。


(1) トンデルモデル

スウェーデンのトンデル博士によるチェルノブイリ後10年間のガン発生件数に関する研究によれば、放射能による土壌汚染レベルが10万Bq/m2増加するごとに、ガン発生率が11%増加する。

IAEAの報告によれば、福島第一原発100km圏の汚染放射能汚染レベルは平均60万Bq/m2。100~200kmの汚染レベルはこれより低い。

200km圏内の住民が避難せずこの地域に住み続けたとすると…

今後10年間の福島第一原発事故の放射能によるガン発生数

0~100km圏       人口330万人のうち103,329人

100~200km圏  人口780万人のうち120,894人

200km圏内合計 人口1,110万人のうち224,223人


(2) ECRRモデル

放射性核種が生命体内でどんな挙動を取るかによって重み付けをしたモデル

200km圏内の住民が避難せずこの地域に住み続けたとすると…

今後50年間の福島第一原発事故の放射能によるガン発生数

0~100km圏       人口330万人のうち191,986人

100~200km圏  人口780万人のうち224,623人

200km圏内合計 人口1,110万人のうち416,619人

このうち半数が10年間で発症し、残りの半数が10~50年間で発症すると推定される。

よって200km圏内の今後10年間の福島第一原発事故の放射能によるガン発生数は208,310人


トンデルモデルとECRRモデルによる今後10年間の福島第一原発事故の放射能によるガン発生数予測は、約20万人で一致した。


(3) ICRPモデル

今後50年間の福島第一原発事故の放射能によるガン発生数 6,158人

この人口のうち250万人はふつうでもガンになると予測されるので、6,158人は見分けが付かず、無視されるであろう。

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(以上Fukushima cancer risk calculation ~ 417,000 cancers forecast for Fukushima 200 km contamination zone by 2061より抜粋・翻訳)


こちらは4/13頃のロシア・トゥデイの映像。

2011年7月17日日曜日

広瀬隆さん、山下氏らを刑事告発


ジャーナリストの広瀬隆さんとルポライターの明石昇二郎さんが、7月8日付けで福島県放射線健康リスクアドバイザーの山下俊一氏、高木義明文部科学大臣、東電幹部やなど合計32名を刑事告発した。


自由報道協会の田中龍作氏によるこちらの関連記事も是非お読みください。

【福島原発事故】 東電最高幹部、山下教授ら張本人32名を刑事告発 ~上~

【福島原発事故】 東電最高幹部、山下教授ら張本人32名を刑事告発 ~下~


今福島の子どもたち(もちろん子どもたちだけではない)がいかに異常な状態におかれているかということを、日本の人々はもっと知った方がいい。25年前のチェルノブイリ原発事故により、どれだけの健康被害が出ているかについては膨大な資料がある。特に福島県放射線健康リスクアドバイザーの山下俊一氏は現地に入って検診を行い、低線量被曝と健康被害の因果関係を明らかにする論文まで発表しているのである。その教訓を生かすどころか、国家権力によって住民、特に自分では選ぶことのできない子どもたちに被曝を強要しているのだ。こんな政府を私は心底憎む。


だが、告発されるべきは彼らだけだろうか?こちらの記事もお読みいただきたい。

日本の市民がここまで冷酷だとは思わなかった~牛は全頭検査で、福島の子供は放置?

2011年7月16日土曜日

伝説のスピーチ


1992年のリオ環境サミットで、各国代表団を前に12歳の少女が行った伝説のスピーチ。

剛速球のど真ん中ストレートで突き刺さることば。

おとなたちよ、このことばを聞け。

2011年7月15日金曜日

放射能で広がる異変~子どもたちに何が起きているか


インターネットメディアOurPlanet-TVがNPOチェルノブイリへのかけはし代表の野呂美加さんをゲストに迎え、子どもたちに起きている異変について話を聞く。

放射能で広がる異変~子どもたちに何が起きているか(OurPlanet-TV 2011/07/14)


OurPlanet-TVでは311以降に周囲の人や動植物に起きた異変を報告するよう呼びかけてきたが、その集計結果も報告されている。

異変の報告はこちら:311以降の異常・異変をお知らせください


私が翻訳プロジェクトに参加している『チェルノブイリ――大惨事が人びとと環境におよぼした影響』(Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment)も採り上げられています。

2011年7月14日木曜日

ふくしま集団疎開裁判の署名にご協力を!

福島県郡山市の14人の原告が郡山市を相手に「1mSV/年以下の安全な場所で教育を実施することを求める仮処分」を申し立てしました。

第1回の裁判が7月5日に行われ、第2回は7月19日に行われる予定です。


裁判官への圧力が予測される裁判です。裁判官の良心と勇気に訴えるため、弁護団が署名を集めています。ネット署名もできるようになりました。是非ご協力ください。


ふくしま集団疎開裁判についてはこちら

ネット署名はこちら

東海第二原発を廃炉に!署名にご協力を

余り知られていませんが、実は今回の震災では東海第2原発も冷却機能の一部が破綻し、あわや大惨事の一歩手前だったのです。

市民団体の方々が東海第二原発の廃炉を求めて署名活動をスタートしました。
ネット署名もできます。
家にいてもできる意思表示!

主催:東海第二原発の再稼働中止と廃炉を求める実行委員会

ネット署名:署名TV

2011年7月13日水曜日

チェルノブイリ被害実態レポート一部先行公開

私が参加している「チェルノブイリ被害実態レポート翻訳プロジェクト」では、このたび、すぐに役立ちそうな部分をウェブで先行公開することになりました。


第一弾はこちら

第13節 チェルノブイリの放射性核種を除去する


科学文献なので少々取っつきにくいかもしれませんが、子どもが体内に取り込んでしまった放射性核種を排出するのにリンゴペクチンが効果があったなど、参考になる情報を含んでいますので、是非ご一読ください。

またどんどん拡散してください。