2008年9月26日金曜日

8年前のトラウマ


私の家は街の中心部から山側へ、田んぼの中の一本道を入っていったところにある。つまり、自転車で行動している私は、街に出るときはずっと下りで楽チンなのだが、逆に帰りはずっと上りで汗だくになる。いつもはようやく家に帰り着いた時点で終点なのだが、その一本道はどこにつながっているのだろうとふと気になった。地図を見てみると、交わることのないと思っていた、渓谷をはさんで平行している道と、奥で合流していることが分かった。

そうと分かったら俄然行ってみたくなる性格である。

ちょうど仕事も入っていなかったので、バッグにカメラと水を詰めて探検に出た。

それは美しい棚田が見渡せる、かなり気持ちの良いサイクリングコースで、私はいい気分で自転車をこいでいた。ふと景色の良い場所に出たので、写真を撮るために立ち止まった。すると道の反対側に寺院があり、そこでおばあさんが笑顔で手招きしている。ふとそちらへ行きかけて、私の心にアラームが鳴った。どこかで知ってる、この感じ。そして、8年前のあの恐ろしい記憶が蘇った。

8年前、私は初めてこの街を訪れた。今ほど車も多くなかったので、毎日あちこち散歩を楽しんでいた。ある日私は街中を外れ、田んぼの中の一本道を歩いていった。するとおばあさんがニコニコ手招きをする。笑顔で挨拶を返す私。私の頭の中では、田舎のおばあさんと心温まる交流をする私、という図式が出来上がっている。おばあさんが「ココナツのジュース、飲んでいきなさい」と言うので、言われるままにおばあさんの後を着いていくと、田んぼのあぜ道を通り、小さな掘立小屋へ連れて行かれた。小屋の中にはおじいさんがいて、無言でナタのようなものを研いでいる。おばあさんがココナツの実を割って、ほら飲みなさいと勧めてくれたので、本当はそんなに飲みたくなかったのだが、お愛想で飲んだ。

すると、豹変したのである、おばあさんが。鬼婆の形相になり、法外な金額を要求してきた。隣では相変わらず無言でナタを研ぐおじいさん…。まるで日本昔話である。

私は60,000ルピア(約600円)ほどをこれしか持っていないと主張して差し出し、這々の体で逃げ出した。

そんなことも、やはり観光地なので、ある。

今日のおばあさんは本当にただのいいおばあさんで、ただ寺院がきれいだから見ていけと言いたかっただけなのかも知れない。それでもまた鬼婆に変身されてからでは遅い。そんなわけで、地元の人との交流のチャンスを逃すのは残念だけれども、やはり警戒を緩めることができない。