2011年8月23日火曜日

小出先生に聞く 福島第一原発の今とこれから

文化放送「吉田照美のソコダイジナトコ 週間エンター“原発のウソ、そして本当の話”」で82223日の2日間(取材は1週間前)にわたって放送された京都大学原子炉実験所助教・小出裕章先生へのインタビュー。



福島第一原発の現在の状況について。

東電・政府が公表するデータから推測するしかないが、そのデータが信用できないため、正確なことは分からない。

1号炉は312日に水素爆発した。

2号炉は315日にサプレッションチェンバー(格納容器の一部)ですでに水素爆発を起こしているので、炉心の相当な部分が損傷していることは確実。しかしその損傷の程度がどうなのか、すでにメルトダウンしているのか、それともまだ圧力容器の中に残っているのか、分からない。

3号炉は314日に水素爆発した。核爆発だったのではないかと推測する声もあるが、水素爆発だと思う。

4号炉は、地震・津波発生時には停止していた。つまり原子炉の中に燃料はなく、燃料はすべて使用済み燃料プールに入っていた。空調施設が3号機と共用だったため、3号機から水素がまわってきて、爆発した可能性があると見ている。使用済み燃料プールの下の階で爆発があり、構造物が破壊されているため、使用済み燃料プールが崩落する可能性がある。東電は下の階の補強工事をすると言っているが、余震による崩壊が懸念される。


東電も政府もきちんと発表していないが、福島第一原発はどれをとっても安定した状態にはなっていない。


汚染水について。

汚染水が地下に染み出さないように地下ダムを造るという話があったが、その後その話が聞こえてこない。どうなっているのか。

5月末に東電の株主総会があった。地下ダムを造ると1千億円かかるため、東電は株主総会前に発表したくなかったようだ。今回の事故の被害を賠償しようと思えば、何十兆円のお金がかかるというのに、1千億円をけちっている場合ではない。即刻着手すべきだと思うが、株主総会が終わっても、東電はすぐに着手するつもりはないようだ。改訂された工程表を見ると、いずれやることはなるようだ。しかし今現在も汚染水は海に向かって流れていっているので、本来なら一刻も早くやるべき。


原発の再稼働について。

原発はいつか事故を起こすから止めてくれと言ってきたが、その声は届かなかった。

しかし今回の事故が起きて、さすがに日本全国の原発は即刻止まるだろうと思ったのに、政府も産業界も一向に止める気がないらしい。電気代が上がるだの、産業が縮小するだの、そんなことばかり言っている。

ドイツなどは今回の事故を受けて脱原発へと舵を切ったというのに、当事国である日本がこういう状況だというのはなぜだと思うか?

産業界は原発に利益を求めてきたので…

しかし人間がいなくなれば経済も何もないのでは?

そのとおりだ。経済原則で言っても余りに馬鹿げていることは今回の事故ではっきりしているのだから、産業界も経済界もさっさと足を洗うというのがまともな決断だと思う。


メディアの対応について。

日本のマスメディアがそれを糾弾しないのが世界から不思議がられているようだが?

世界各国のメディアから取材を受けるが、なぜ日本のメディアはこんなにだめかとみな首をかしげている。日本の歴史を見ると、お上意識が強く、お上の決めたことにメディアが付き従って今日まで来たのではないか。海外のメディアは、信じられない、という反応だ。

海外メディアがいちばん知りたがっていることは?

今回の事故を教訓に世界が原発から足を洗おうとしているときに、当の日本がそうしないのはなぜかということだ。

産業界・経済界は原発に利益を求めてきたが、それは既に崩れた。それでも日本という国が原発をあきらめない理由は、核だと思う。原子力の平和利用という名の下に、いつでも核兵器を造れる技術を維持したい、強国の仲間入りをしたいということだ。


先日、東電・政府は放射性物質の放出量が事故当時の1千万分の1になったと発表したが、放出は現在進行形。4月の時点ではチェルノブイリの1割程度と発表があった。チェルノブイリから放出された放射性物質の量は、セシウム137換算で広島原爆の800発分。ということは、すでに広島原爆80発分以上の死の灰がまき散らされたということになる。放射性物質の放出はいつになったらおさまるのだろうか?



事故の収束について。

311日から10日間くらいの間に大気中への大量の放射能放出があり、それ以降は何とかそれを防ぎながら今日まで来ている。ただし汚染水があふれかえって、どんどん海へ流れている。

今後懸念されるのは、水蒸気爆発の可能性がまだ残っていること。それが起きれば、今までの何十倍もの放射能が大気中に放出される。

東電は、1号機は水位計を調整したところ水がなく、炉心がメルトダウンしていると認めている。しかし2号機と3号機については、原子炉建屋の中に入れないため、水位計の調整すらできないし、どういう状態になっているのか分からない。東電は1号機のように2号機、3号機もメルトダウンしているだろうと推定しているが、これは推定に過ぎない。もし2号機、3号機がまだメルトダウンしていなくて、原子炉の中に炉心が残っており、今後冷却に失敗して、炉心全体が溶融して落ちるようなことがあると、このときに水蒸気爆発が起きる可能性がある。このため冷却し続けなければならない。

水蒸気爆発を回避するにはどのくらいの時間がかかるのか?

炉心を溶かすほどのウランの発熱がどのくらい続くかということから考えると、半年から1年は予断を許さない状況が続くと思われる。

ただし、水蒸気爆発が回避できたとしても、そこにある放射性物質がなくなるわけではない。それは放っておけば環境に少しずつ汚染を広げる。これを防ぐために、地下ダムやチェルノブイリのような石棺も必要になる。これには数十年単位の時間がかかる。また一度造ってもコンクリートの構造物であり劣化するため、新しくする必要がある。こういった作業が何百年もの期間続くことになる。


今の福島の汚染の状況について。

福島県の人が住んでいる地域の大地、建物、がれきなどすべてが、放射線管理区域から持ち出してはいけないほどの汚染を受けている。

日本の法律では、日本国民は年間1mSV以上の被曝をしてもさせてもいけないし、放射線管理区域から1平方メートル辺り4万ベクレル以上の汚染物質は持ち出し禁止になっている。この法律を厳密に適用するなら、福島県全域に匹敵する土地を放射線管理区域に指定して、無人地帯にしなければならない。

にも関わらず、福島第一原発の事故が起きた途端に、国自らがその法律をチャラにした。今の政府の首脳はみな刑務所に入れるべき。

また福島県全域が失われるような、とてつもないことが起きているということを、皆がもっと感じるべき。



放射能汚染が心配される今後の日本について。

福島第一原発から放出された放射能はすでに地球全体に拡散している。もちろん沖縄から北海道まで日本全域に放射能は到達している。但し、もちろん汚染には濃淡がある。福島県内の汚染は猛烈で、茨城、宮城、千葉、埼玉、東京にもホットスポットはたくさんある。神奈川からも静岡からもお茶から放射性物質が検出されている。今後は汚染された食べ物が食卓に上ることになる。

希望はあるか?

絶望してしまったら最後なので、せめて子どもは守りたい。