5月23日、子ども20ミリシーベルト基準撤回を求め、福島からバス2台で文科省にやってきた方たちが通されたのは文科省の中庭だったという。「会議室はどこも塞がっている」というのが文科省側の言い分で、高木文科相は本会議、政務三役は不在を理由に交渉出席を拒否。対応したのは5月2日の交渉と同じ渡辺格・原子力安全監。雨が降る中、コンクリートの中庭にすわらされた福島の方たちは粘り強く交渉を続けたが、未だに基準は撤回されていない。今日も福島の子どもたちは(もちろん妊婦さんも、大人たちも)高い被曝環境に曝されている。
「20mSv」撤回求める福島の父母を雨中コンクリートに座らせた文科省(田中龍作ジャーナル 2011/5/ 23/22:15)
これは福島の問題で、自分には関係ないと思っている人がいるとしたら、考えてみてもらいたい。
今でも事故が進行している福島第一原発は東京電力のものだ。福島で作った電気を長い送電線で東京電力の給電範囲に送っている。福島は東北電力の給電範囲であり、今被害に遭っている福島の人たちは自分たちが使ってもいない電気のために、都会に送る電気のために、東京電力の給電範囲にいる人たちの代わりに被害に遭っている。
私自身、今回の事故が起きるまで、原発がどこにあるのかも知らなかった。自分が使っている電気がどこで作られているのかも知らず、原発の存在も意識せずに生きてきた。まったく恥ずかしい限りである。
この地図を見れば一目瞭然だが、関東にも名古屋にも大阪にも原発はない。最大の電力の消費地である都会に原発がないのはなぜか。
こういう法律がある。
2. 立地審査の指針
立地条件の適否を判断する際には、上記の基本的目標を達成するため、少なくとも次の三条件が満たされていることを確認しなければならない。
2.1 原子炉の周囲は、原子炉からある距離の範囲内は非居住区域であること。
2.2 原子炉からある距離の範囲内であって、非居住区域の外側の地帯は、低人口地帯であること。
2.3 原子炉敷地は、人口密集地帯からある距離だけ離れていること。
つまりそもそも原発というのは人口の多い都会に作るには危険すぎるから、人口の少ない地方に押しつけるということなのである。都会に住んでいる人たちは原発の存在を感じることもなく、生み出される利益だけを享受し、危険だけは地方に押しつけているということを認識すべきだと思う。
25年前に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原子力発電所事故。放出された放射能は北半球ほぼ全域に広がり、地球被曝と言われた。約8,000 km離れた日本にも放射能が降ってきて、水や母乳からも放射能が検出されている。しかし当然ながら現地の汚染度はその比ではなかった。
図1 チェルノブイリ周辺のセシウム137汚染状況
事故直後、ソ連政府は原発から30 km圏内の人を強制移住させた。その数13.5万人。ところが後になって人が住めないような汚染地域が非常に広い範囲に及んでいることが分かった。ソ連政府はその地域の人たちも移住させることにした。その数27万人。ところがその直後にソ連が崩壊し、移住させることができなくなった。それで今でもそういう汚染地域には人が住んでいる。この移住対象地域の総面積は1万Km2に及ぶ。日本で言えば、福井県、京都府、大阪府を合わせた面積にほぼ相当するそうである。
25年経った今でもチェルノブイリ原発から30km圏は立入禁止区域となっている。セシウム137の半減期は30年。地表を汚染したセシウム137は延々とガンマ線を出し続け、地面からは外部被曝を、作物中に移行すれば内部被曝を人々にもたらす。ある日突然「原発でちょっとした事故があったから、3日分の荷物を持って迎えのバスに乗るように」と言われ、強制避難させられた住民たちは、その後二度と自分の故郷に帰れなかった。写真家の広河隆一さんはこうやって消えた村々を取材して「チェルノブイリ 消えた458の村」という写真集を出している。
同じことが福島でも起きようとしている。
福島県浪江町は多くが半径20km圏の警戒区域に入っている。浪江町から大阪に避難している14歳の女の子のことば。
「浪江にいるときは、都会のほうがいいって思っていたけど、今は帰りたい。浪江は、自然があって空気も水もきれいだった。でもそれも、もうないんですよね」
14歳少女、つのる望郷 福島・浪江町から堺市に避難「帰りたいけど、帰れない」(産経ニュース2011/5/15 /01:52)
福島でもたくさんの人々が故郷を失い、二度と帰れないことになるだろう。
日本の法律を厳密に適用するなら、「放射線管理区域」に指定しなければいけない地域(1cm2当り4ベクレルを越える汚染の恐れのある場所)はおそらく福島全域に及ぶだろう、と小出裕章・京大原子炉実験所助教は言う。「放射線管理区域」とは一般人の立入が制限され、18歳未満の労働が禁止され、その中では飲食や寝ることも禁じられるような場所。今福島は学校を含め、多くの場所がそういう状態になっている。
なぜ東京電力の電気のために福島の人たちがそんな目に遭わなければいけないのか。
私たちは皆このことを重く受け止めるべきだ。
参考資料:

