よく原発事故により放出された放射能を自然放射線やレントゲンと比較して、このくらいならレントゲン一枚撮ったくらいだとか、一回飛行機に乗ればこのくらいの宇宙線を浴びるとか、バナナには放射性カリウムが含まれているとか言って、いかにも放射線は実は身近にあるもので、危険ではないという印象を与えるような説明がまことしやかに行われている。本当にそうなのだろうか。調べてみた。
まず、自然にも放射線はあるというのは本当である。
下の図を見ていただきたい。地球には46億年ほどの歴史があると言われている。地球が誕生したばかりのころ地球には放射性物質がもっとたくさんあったし、宇宙からも宇宙線や紫外線が降り注いでいたので、最初の生命の誕生は宇宙線が届かない深い海の底だった。だんだんヴァンアレン帯という宇宙線をふせぐバリアができ、オゾン層ができて紫外線を防いでくれるようになり、地球上の放射性物質も寿命がきて減っていって、生命が生きられる環境が整った。
(図はよくわかる原子力キッズページより)
では、自然の放射線と原子炉でウランの核分裂反応の結果生み出される人工の放射線とはどう違うのだろうか?
こちらに大変興味深い講義の記録がある。市川定夫先生という放射線遺伝学者の講義である。
お話を要約してみる。
カリウム40などは自然に昔からあった自然放射性核種。生物は進化と適応の過程でそういう危険なものを蓄えないようになった。言い方を変えれば、自然の放射性核種を蓄えない生き物だけが生き残っている。だから自然の放射性核種を濃縮する生物はいない。
しかし天然ならば非放射性で安全な元素の放射性核種を人工的に作ってしまうと、生物はそれに適応していないので、安全なものだと思って濃縮・蓄積してしまい、体内から内部被ばくを与える。
例えば天然のヨウ素は非放射性なので、放射性ヨウ素131を人体は見分けることができず、どんどん甲状腺に溜め込んでしまい、甲状腺がんなどを引き起こす。
天然のセシウムも非放射性であるため、放射性セシウム137と見分けることができず、筋肉や生殖器に溜めこんでしまう。
天然のストロンチウムも非放射性。ストロンチウムはカルシウムと挙動が似ているため、放射性ストロンチウム90も骨の中に溜め込んでしまい、白血病や骨髄ガンを引き起こす。
人工放射性核種も自然放射性核種も出す放射線はα線かβ線かγ線で同じである。
ただ挙動が違うのである。
つまり、
人工放射能は体内に濃縮・蓄積する。
自然放射能は体内に濃縮・蓄積しない。
【市川定夫先生について】
微量放射線の遺伝的影響の研究で知られる
1958年京都大学卒、1963年京都大学大学院修了、農学博士。
1935-昭和後期-平成時代の放射線遺伝学者。
昭和10年12月7日生まれ。アメリカのブルックヘブン国立研究所研究員などをへて、昭和54年埼玉大教授となる。ムラサキツユクサをもちいた微量放射線の遺伝的影響の研究でごく低線量でも生物に影響があることを証明。大阪出身。京大卒。著作に「遺伝学と核時代」「新公害原論」など。
YouTube【放射能】自然放射線と人工放射線のちがい/市川定夫氏より
